個人住民税とは
個人住民税とはその地域に住む住民が、豊かで健康な日常生活を送るために行われる事業に関して、住民自身がそれぞれの負担能力に応じて費用を分担し合うという性格の税金で、住民として暮らしていくために支払わなければならない地域の会費のようなものです。
徴収の方法としては「特別徴収」と「普通徴収」に分かれています。
特別徴収とは
特別徴収とは、事業主が毎月従業員に支払う給与から住民税を徴収し、従業員に代わって従業員の居住している市区町村へ納入する制度です。
所得税の源泉徴収義務のある事業主は、従業員の個人住民税についても給与から差引して納める事(特別徴収)が法律等で義務付けられています。そのため、給料日の間隔がひと月を超える、又は給与から住民税額が引ききれないなどの特別な理由がない限り、普通徴収は認められません。
特別徴収のメリット
特別徴収では納税者である従業員にとっては、納付忘れがなく、納税の手間がかからない、また毎月の給与天引きのため税負担を感じにくいなどのメリットを感じることができます。
特別徴収のデメリット
特別徴収は従業員にとってはメリットがありますが、一方で事業者側にとっては、従業員全員から住民税を徴収し、市区町村へ納付しなければならず、事務処理の手間がかかるというデメリットがあります。
普通徴収とは
普通徴収とは、市区町村から送付される納税通知書を利用し、納税者本人が住民税を納付する方法です。
普通徴収で納付するのは、主に自営業やフリーランス、個人事業主などです。
普通徴収のメリット
普通徴収される住民税の納付は基本的に金融機関やコンビニエンスストア等で行いますが、市区町村によってはクレジットカードやスマートフォン決裁で納付できるため、ポイントを貯めることができます。ただし、手数料には注意が必要です。
普通徴収のデメリット
普通徴収は自動的に給与から天引きされる特別徴収と違い、自ら納付をきちんと管理しなければなりません。また、特別徴収と違って年4回(6月末、8月末、10月末、翌年1月末)に分割して支払うため、毎月支払い(12回の分割)よりも1回の納税額が高く負担感が大きくなります。
上記のように、普通徴収は納税者本人が直接納めるのに対して、特別徴収は事業者が行う手続きが多くあります。ここからは特別徴収の手順や事務手続きを見ていきます。
特別徴収の手順
1. 給与支払報告書を市区町村へ提出する
毎月1月1日現在において給与の支払いをしている事業主で、所得税の源泉徴収義務のある事業主は、毎年1月31日までに「給与支払報告書」を従業員が1月1日現在に居住している市区町村に提出します。
給与支払報告書はeLTAXにより提出することができます。なお、前々年における源泉徴収票の税務署へ提出すべき枚数が100枚以上である場合は、eLTAXまたは、光ディスク等による提出が義務付けられています。
2. 特別徴収税額通知の送付
個人住民税の徴収期間は、6月から翌年5月までの12カ月間です。
毎年5月31日までに、従業員が居住している市区町村から事業主(特別徴収務者)宛てに「特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用・納税義務者用)が送付されます。
3. 納期と納入方法
6月の給与から特別徴収(天引き)を開始します。市区町村への納入期限は、特別徴収した月の翌月10日までです。
事業主は従業員が居住している市区町村から送付された納入書を使用して金融機関等で納入します。または、eLTAXを利用して電子納税を行うこともできます。
・納期の特例
原則として、特別徴収分は毎月納入することになっていますが、給与の支払いを受けるものが常時10人未満の事業所は、申請により市区町村長の承認を受け、毎月の納入から年2回の納入に変更することができます。
承認を受けた場合、個人住民税の特別徴収分の6月から11月までの分を12月10日までに、12月から翌年5月までの分を6月10日までに納入します。
※ただし、従業員からの徴収は毎月行います。
こんなときはどうする?
・税額が変更になった時
通知済みの特別徴収税額が変更になった場合は、市区町村から「特別徴収税額の変更通知書」が送付されるので、通知書を従業員に交付し、通知された変更月から徴収金額を変更して給与から徴収し、納付します。
・退職者や休職者の徴収は?
- ○6月1日から12月31日までに退職等をした場合
従業員から一括徴収の申し出があったときは、退職時に支払いをする給料、又は退職手当等から一括徴収して、納入します。 - ○翌年1月1日から4月30日までに退職等をした場合
法律により、特別徴収できなくなる税額は、本人の申し出がなくても、5月31日までの間に支払いをする給与、又は退職手当等から一括徴収することになっています。(死亡退職の場合や、一括徴収すべき金額が退職手当等の金額を超える場合をのぞきます) - ○給与所得者異動届の提出
退職、休職等により給与の支払いを受けなくなった方がいる場合は、必ずその事由が発生した日の属する月の翌月10日までに市区町村に「給与所得者異動届出書」を提出します。
※給与所得者異動届出書の提出が遅れると、退職者、休職者などの税額が事業主の滞納額となったり、税額変更や普通徴収への切り替え処理が遅れた結果、従業員に対して一度に多額の住民税の納付義務を負わせてしまう恐れがありますので、期限は守らなければなりません。
・新入社員が入社した時
従業員(納税義務者)から、普通徴収から特別徴収への切り替えを希望する申し出があった場合は、「特別徴収への切替申請書」を提出します。
ただし、申告時点で普通徴収の納期限がすぎているものは、特別徴収への切替はできません。
まとめ
このように住民税の特別徴収は従業員にとっては、メリットが大きくありますが、事業者の事務担当にとっての事務手続きは多くなります。従業員の状況に合わせてきちんと届出書等を提出しなければなりませんので、ミスが生じやすい手続きの一つです。
負担軽減や計算ミスを回避する方法として、給与計算のアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。
MASONにぜひお気軽にお問い合わせください。