コラム

社会保険料控除は全額が控除の対象!対象となる保険や必要書類を解説

年末調整における社会保険料控除とは、社会保険料を納めた際に受けられる所得控除です。1年のうちに支出した保険料は上限なく所得から控除できます。

今回は社会保険料控除の概要について説明するとともに、控除できる保険や手続きに必要な書類について紹介します。

社会保険料控除とは?

社会保険料控除とは、自分自身や配偶者、その他の親族の負担すべき社会保険料を納めたときに受けられる所得控除のことです。控除できる金額に上限はなく、納めた金額はすべて所得から控除できます。給与所得者の場合、控除の手続きは基本的に年末調整で行います。

ここでは、社会保険料控除の意味や控除できる範囲、行う方法などを紹介しましょう。

所得控除の上限はない

社会保険料控除の対象となる社会保険料は、健康保険や国民健康保険、厚生年金保険、国民年金保険などです。年末調整の社会保険料控除で控除できるのは1月から12月までに支払った社会保険料で、控除できる金額に上限はありません。納めた全額を所得から控除できます。

納付期日が到来して本年中に支払うべき保険料がある場合でも、現実に支払っていないものは控除の対象ではありません。一方、以前から滞納していた分を期間内に一括して支払った場合、その全額も控除できます。

国民年金保険料は前納できますが、期間内に前納している場合は全額が控除の対象です。

家族の分も控除できる場合

年末調整の社会保険料控除は自分の分だけではなく、生計を一にする配偶者や親族の社会保険料を負担した場合も対象になります。「生計を一にする」とは、同居や別居を問わず生活費を共有している場合です。例えば、別居中の子どもでも、生活費の仕送りなどをしていれば生計を一にしており、控除の対象になります。

また、子どもが扶養控除の対象から外れていても、生計を一にしていて社会保険料を負担している場合は控除の対象です。

年末調整で控除する

給与所得者の場合、社会保険料控除の手続きは年末調整で行います。そのため、会社では毎月従業員の給与から天引きする社会保険料の金額をしっかり管理しておかなければなりません。

ただし、以下の場合は会社側で社会保険料の把握ができないため、自分で確定申告しなければなりません。

  • 年収が2,000万円を超える
  • 副業で年間20万円以上収入がある
  • 会社の役員などで、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている
  • 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている
  • 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている
  • 退職所得の税額が源泉徴収された金額よりも多い

年末調整の計算については、以下の記事で説明しています。合わせて参考にしてください。
社会保険の計算方法とは?保険の種類ごとにシミュレーションで解説

参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

社会保険料控除の対象となる社会保険

社会保険料控除の対象となる社会保険は複数ありますが、会社で年末調整の対象になる社会保険は主に健康保険や厚生年金保険、介護保険などです。

国民年金の場合は控除証明書の添付が必要になり、年の途中で入社した場合は前の職場の源泉徴収票を従業員から入手しなければなりません。

社会保険料の対象となる、代表的な社会保険について紹介します。

健康保険・国民健康保険

全国健康保険協会など毎月給与から控除している健康保険のほか、国民健康保険の保険料も社会保険料控除の対象です。会社勤めの人が対象ではない国民健康保険も、生計を一にする配偶者・家族の分を負担していれば控除の対象になります。

年末調整や確定申告のどちらでも納付証明書の添付は必要なく、書類に納付金額を記載するだけです。

厚生年金保険・国民年金保険

毎月の給与から源泉徴収している厚生年金保険も、社会保険料控除の対象です。国民年金保険も控除の対象ですが、日本年金機構から送られてくる控除証明書の添付が求められます。

なお、厚生年金保険の保険料は会社と折半になっています。年金に反映される保険料は全額ですが、控除の対象となるのは源泉徴収されている自己負担分のみです。

介護保険

介護保険は、健康保険に加入している65歳以上の人(第1号被保険者)と、40歳から64歳までの人(第2号被保険者)が加入する保険です。

第2号被保険者は給与から天引きされ、65歳以上の第1号被保険者は年金から特別徴収されます。年金から特別徴収された分を所得から控除できるのは、徴収された本人のみです。控除の手続きで控除証明の添付は必要ありません。

後期高齢者医療保険

後期高齢者医療保険は、75歳以上の方が加入する保険です。保険料の徴収方法は3種類あり、社会保険料控除の手続きはそれぞれ異なります。

後期高齢者医療保険の保険料は原則として年金から特別徴収され、社会保険料控除を利用できるのは年金受給者のみです。そのため、従業員が家族の後期高齢者医療保険料を負担している場合でも、年金から特別徴収されている場合は所得控除できません。

一方、後期高齢者医療保険は市区町村の窓口で申請することで口座振替の普通徴収に変更することができます。この場合、生計を一にする家族の保険料を自己の口座から引き落としにしているのであれば、社会保険料控除を適用することができます。

雇用保険

労働保険料のうち、従業員が負担する雇用保険も社会保険料控除の対象です。労働保険には従業員が業務や通勤中などに負った怪我や疾病を保障する「労災保険」と、休業中などに給付金の受給ができる「雇用保険」があります。

労災保険は全額会社が負担するものですが、雇用保険は従業員と雇用主の双方が負担するもので、従業員負担分を毎月の給与から徴収します。

年末調整では、1年間に源泉徴収した雇用保険も給与所得から控除しなければなりません。

年金基金の掛金

年金基金とは将来受け取る年金額を増やすため、老齢基礎年金もしくは老齢厚生年金に上乗せして保険料を支払う制度です。

基金の制度は厚生年金と国民年金の双方にあり、いずれの場合も1年間に支払った掛金は社会保険料控除の対象になります。控除の手続きをする際には、各基金から送られてくる控除証明書の添付が必要です。

社会保険料控除に必要な書類

社会保険料控除の手続きは年末調整と確定申告があり、それぞれの手続きで必要になる書類があります。

年末調整は会社が行いますが、従業員から申告書などの書類を受け取らなければなりません。確定申告では確定申告書のほか、一部の保険料は控除証明書の添付が必要です。

社会保険料控除に必要な書類について、年末調整と確定申告に分けて紹介します。

年末調整の場合

年末調整の社会保険料控除に必要な書類は、以下の2つです。

  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書

「給与所得者の保険料控除申告書」は、従業員が支払った控除の対象になる生命保険料などを記載してもらう書類です。

年末調整における社会保険料控除の計算は2種類あります。ひとつは毎月の給与から源泉徴収した社会保険料の計算です。会社で管理している帳簿に基づいて算出します。

もうひとつは家族の保険料など従業員が個人で支払った分の計算で、あらかじめ配布する「給与所得者の保険料控除申告書」に支払った保険料を記載してもらわなければなりません。

また、国民年金保険と国民年金基金の保険料を控除したい場合、それぞれ日本年金機構あるいは国民年金基金連合会が発行する控除証明書の添付が必要です。従業員に「給与所得者の保険料控除申告書」を配布する際、早めに証明書が必要なことを伝えておきましょう。

確定申告の場合

年収が2,000万円を超えるなど年末調整で社会保険料控除ができない場合、従業員自身で確定申告をしなければなりません。給与所得者が確定申告する場合は確定申告書Aを用意し、国民年金保険と国民年金基金の保険料を控除する場合は控除証明書も必要です。

国民年金保険の控除証明書は日本年金機構から送られてきますが、その年の9月までに納付した金額しか反映されていないため、10月〜12月に支払った保険料は領収証を添付するか、再度控除証明書を発行してもらう必要があります。

社会保険料控除証明書がないとき

国民年金保険料、国民年金基金の掛金については証明書類が必要ですが、紛失などで再発行してもらう場合、年末調整の期限に間に合わない可能性もあります。期限までに用意できないときは、翌年1月31日までに提出することを条件に年末調整することが可能です。

従業員が年末調整の期限までに用意できなかった証明書は、必ず翌年の期限までに受け取って提出するようにしましょう。

社会保険料控除の注意点

給与から源泉徴収されたもの以外に社会保険料控除の対象がある場合、「給与所得者の保険料控除申告書」に記載しなければ年末調整を受けることはできません。

申告漏れがある場合は年末調整で控除できませんが、確定申告することで控除を受けることができます。

ここでは、社会保険料控除の手続きで注意したいことを紹介します。

年末調整で申告漏れがある場合

社会保険料控除できる支出があるのに申告書に記載し忘れた場合は、確定申告で対応できます。必要書類を揃え、期限内に提出しましょう。確定申告の期間は翌年の2月16日〜3月15日の間で、曜日により日にちがずれる年もあるため事前に確認しておいてください。

期限を過ぎた場合でも、還付を受けるのみであれば5年以内に申告できます。

年の途中で就職や転職、退職した場合

年の途中で就職もしくは転職した従業員の場合、年末調整は12月に在籍している会社で行います。前職の源泉徴収票を提出してもらい、前職分も含めて社会保険料控除を計算してください。

年の途中で退職するなど、12月の時点で在籍していない従業員は年末調整ができません。退職前に源泉徴収票を作成して渡し、自分で確定申告するか次の就職先に提出してもらいましょう。

まとめ

年末調整の社会保険料控除は、毎月の給与から源泉徴収した全額が控除の対象です。生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を納めたときも、給与所得から控除できます。

社会保険料控除を含めた年末調整の手続きは煩雑で、年末の忙しい時期には手が回らないという会社もあるでしょう。外部委託したいと検討している場合、MASONの給与計算アウトソーシングがおすすめです。

年末調整をはじめ給与に関わる業務全般を引き受けており、面倒な社会保険料控除も安心して任せられます。ぜひお気軽にご相談ください。

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