勤怠管理とは、社員の就業状況を正確に把握して過重労働がないか確認し、給料計算や評価などに反映させることです。なぜ重要とされているのか、また、メリットや実施の際の注意点、勤怠管理システムの選び方について解説します。
勤怠管理とは?
勤怠管理とは、従業員の労働時間を企業側が把握することです。例えば、8時45分から17時45分まで就業し、12時から13時までは休憩をとったなど、詳しく時間を把握し、管理します。また、1週間の労働時間や残業時間なども正確に管理することが必要です。
なお、労働基準法が改正され、タイムカードなどの勤怠管理記録の保管義務期間は2年(移行期間の保管期限は3年)から5年になりました。そのため、未払いの賃金や割増賃金、休業手当などがあるときの請求期間も5年に延長されます。
勤怠管理が必要な事業所とは?
勤怠管理は、従業員を雇用して労働が行われるすべての事業所において必要です。しかし、自然条件などによって仕事時間が制限される水産業や農業などの業種においては、例外的に勤怠管理の義務は課せられていません。
また、みなし労働時間制が適用される事業所でも、勤怠管理の義務が課せられないことがあります。
なお、みなし労働時間制とは、従業員が業務の一部あるいは全部を事業所以外で行い、労働時間を測定することが難しい業種において、最初から労働時間を決めておく制度のことです。
勤怠管理の対象者とは?
勤怠管理の対象となるのは、監督する立場以外の従業員全員です。パートやアルバイトなどの非正規雇用の従業員も全員対象となるので、正確に管理するようにしましょう。
なお、監督する立場とは、役職名に「監督」がついている方を指すのではありません。従業員の労務を管理する立場にある方、労働条件の決定に関与する方は、すべて監督する立場です。役職名ではなく職務内容や権限に応じて監督する立場にあるかどうかを判断しましょう。
ただし、みなし労働時間制が適用されている労働者に関しては、勤怠管理の対象から省かれる点に注意が必要です。
例えば、リモートワークや営業などに従事している従業員のみ、みなし労働時間制が適用されている職場では、これらの従業員と監督する立場にある従業員を除く全員が勤怠管理の対象から省かれます。
勤怠管理が必要とされる3つの理由
勤怠管理を実施・保管することは、労働基準法の遵守につながるだけでなく、事業所にとっても必要性が高く、意味のあることです。特に次の3つの理由において、勤怠管理は必要だといえるでしょう。
- 1.従業員の過重労働を防止するため
- 2.正確に給与計算をするため
- 3.健全な職場環境を構築するため
それぞれの理由について詳しく解説します。
1. 従業員の過重労働を防止するため
原則として、労働基準法では労働時間について以下のように定めています。
- 1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならない
- 労働時間が6時間を超えるときは45分以上の休憩、8時間を超えるときは1時間以上の休憩を与える必要がある
- 週に1日以上、4週間で4日以上の休日を与える必要がある
これらのルールを守ることは、単に法律を守るだけでなく、従業員の過重労働を防ぐことにもつながります。心身ともに健康な状態で仕事に従事してもらうためにも、事業所側が適切に勤怠管理を行うことが必要です。
2. 正確に給与計算をするため
勤怠管理を行うことで、従業員の労働時間を正確に把握することができます。時間内労働や時間外労働についても正確に把握でき、給与計算も正確に行えるようになるでしょう。
特に残業や休日出勤が日常的に行われている職場や、基本給がなく時給で賃金が決まるパート、アルバイトの従業員にとって、正しい勤怠管理は必要不可欠です。
3. 健全な職場環境を構築するため
勤怠管理を正確に実施することで、従業員は労働に対する正当な対価を受け取れるようになります。公正かつ従業員の満足度が高い職場環境を構築するためにも、勤怠管理は欠かせない要素といえるでしょう。
また、過重労働を防止し、従業員の健康を守ることも勤怠管理の役割です。法令を遵守した健全な職場環境を構築するためにも、正しく勤怠管理を行っていきましょう。
勤怠管理の方法
勤怠管理の方法としては、次の3つのうち、いずれかを用いることが一般的です。
- タイムカード
- 自己申告
- 勤怠管理システム
具体的にどのような方法なのか、メリットやデメリットについても解説します。また、それぞれの方法が適した職場や働き方についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
タイムカード
出社したときと退社するときの時間をレコーダーで記録するタイムカードは、勤怠管理のオーソドックスな方法です。レコーダーが設置されている場所まで行かないと出社記録を残せず、不正をしにくいというメリットがあります。
しかし、テレワークや出先から自宅に直帰するときには対応できません。また、自分以外の従業員のタイムカードを押すこともできるので、複数の従業員が連携すれば不正をできる点にも注意が必要です。
自己申告
従業員の自己申告による勤怠管理方法もあります。例えば、出勤簿を作成し、従業員各自が出社時間や退社時間を書き込むこともできるでしょう。
また、出勤簿をオンラインドキュメントとして作成すれば、どこからでも出退勤の記録をつけることができるため、テレワークや直帰にも柔軟に対応できます。
ただし、不正をしやすい点には注意が必要です。自己申告により勤怠管理を行うときは、定期的に実態調査をすることも検討しましょう。
勤怠管理システム
さまざまな業者が提供している勤怠管理システムを導入することもできます。例えば、オンライン上で管理するクラウドタイプのシステムであれば、テレワークや出先からの直帰にも対応可能です。
また、指紋認証などで本人確認を行ってからタイムカードを押せるシステム、勤務地から一定の距離にまで近づかないと打刻できないGPS付きのシステムなどもあり、外勤が多い業種でも適切に勤怠管理を行えるでしょう。
勤怠記録システムのなかには、集計から給与計算までワンストップでできるものもあります。種類も豊富なので、業種や働き方に合わせて選びましょう。
勤怠管理システム導入のメリット
タイムカードや自己申告による勤怠管理には限界があり、テレワークが増えてきている現在の働き方では対応しづらい部分もあります。
さまざまな働き方に対応し、なおかつより正確に勤怠管理を行うためにも、勤怠管理システムの導入を検討できるでしょう。
勤怠管理システムの導入により得られるメリットとしては、次の2点が挙げられます。
- 労務関係のトラブルを回避できる
- 給料計算等の手間削減とミスの回避
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
労務関係のトラブルを回避できる
勤怠管理システムを導入すると、労働時間をより正確かつ細かく記録することができます。また、従業員自身で労働時間を確認できるシステムであれば、記録漏れや申請漏れなども早めに気づくことができるでしょう。
過重労働や残業代がついていないなどのトラブルを回避することにもなるので、より働きやすい職場へと変化できます。
給料計算等の手間削減とミスの回避
出勤簿のように手書きで記録する場合には、従業員一人ひとりの労働時間を担当者が計算することになるため、計算ミスやカウント漏れなどが生じる可能性があります。
エクセルを使うと計算ミスは回避できますが、計算の元となる出社時間や退社時間の入力ミスが発生する可能性があり、給料計算を間違う可能性があるでしょう。
一方、勤怠管理システムであれば、時計が内蔵されているため、時間を打ち込む必要がありません。不正を回避できるだけでなく、悪意なくミスすることも回避できます。労働時間の集計も自動的にできるため、計算ミスも回避できるでしょう。
既定の勤務時間を事前登録しておけば、時間外労働の時間も自動的に計算でき、より正確な勤怠管理を実現します。
また、手間を削減できるのも勤怠管理システム導入のメリットです。自動的に集計や給料計算ができるだけでなく、ミスがなくなることで集計・計算のやり直しも回避できるため、労務関連の負担を大きく削減できます。
勤怠管理システム導入の注意点
勤怠管理システムを導入することで、労務管理の手間やミスを回避できるなどのメリットを得られます。
しかし、勤怠管理システムには多くの種類があるため、自社の働き方や業種、重視したいポイントなどに合わないシステムを導入すると、かえって勤怠管理がしにくくなる可能性もあるでしょう。
その他にも、導入時には次の2点に注意することが必要です。
- システム利用のルールを徹底する
- 従業員の希望を反映させる
それぞれの点についてわかりやすく解説します。
システム利用のルールを徹底する
オンラインで利用できる勤怠管理システムであれば、テレワークに従事する従業員が多い職場でも勤怠管理をしやすくなります。しかし、結局は自己申告となるため、システムを適切に使用するためのルールを徹底することが必要です。
例えば、時間外労働の上限を決める、勤務時間内に無理なく終えられる仕事量に調整するなどのルールが必要と考えられます。従業員の働き方や懸念点などをベースにルールを設定し、新しい勤怠管理システムを運用しながら調整していくようにしましょう。
また、実態調査を定期的に行うことも、勤怠管理システムを利用するうえで欠かせません。勤怠管理システム導入前と変わった点などに注目し、従業員が実際にどのようにシステムを利用しているのか調べる機会を設けましょう。
従業員の希望を反映させる
勤怠管理は、従業員の労働時間を正確に把握することだけを指しているのではありません。従業員が希望する働き方を実現するために、労働時間を調整するという役割もあります。
例えば、配偶者の扶養控除の条件を満たすために、給料に上限を定めて働いている従業員もいるかもしれません。また、従業員自身の社会保険料が発生しないように働きたいと考えている可能性もあります。
反対に、時間外労働を増やして時間外手当も増やしたいと考えている従業員もいるでしょう。従業員すべての希望を聞き、適切に労働時間を管理することが必要です。
勤怠管理システムによっては残業の上限時間などを登録することで数値に近づくとアラート機能が作動するものもあります。上手に活用することで、すべての従業員が働きやすい環境にしていきましょう。
勤怠管理システムの選び方
勤怠管理システムにより働きやすい職場環境を目指すためにも、使いやすいシステムかどうか確認してから導入することが必要です。
特に次の3つのポイントに留意して、勤怠管理システムを選びましょう。
- 従業員にとって使いやすいシステムか
- 労務担当者にとって使いやすいシステムか
- 設定の多様性と機能内容
それぞれのポイントにおいて何に注目すれば良いのか、わかりやすく解説します。
従業員にとって使いやすいシステムか
勤怠管理を行うのは企業側であっても、実際に勤務開始や終了の記録を行うのは従業員です。従業員にとって使いやすいシステムかどうか確認しておきましょう。
従業員が使いにくいと感じると、優れた機能があっても活用できずに無駄になってしまいます。導入前に試用期間のある勤怠管理システムであれば、より好ましいでしょう。
勤怠管理システムによっては、有給休暇や代休の申請手続きができたり、有給休暇の残日数を確認できたりするものがあります。テレワークで働く従業員が多いときには、便利な機能となるでしょう。
従業員がどのような機能を求めているのか調査してから、勤怠管理システムを導入することも大切です。
労務担当者にとって使いやすいシステムか
勤怠管理システムを用いて、各従業員の勤務時間や時間外労働時間、有給休暇の取得などを確認するのは労務担当者です。勤怠管理システムを導入するときは、労務担当者にとって使いやすいシステムか確認するようにしましょう。
集計機能や設定方法などが使いやすくなると、労務担当者の操作性は向上します。導入前に試用期間が設定されている勤怠管理システムであれば、労務担当者にとって使いやすいかどうかを確かめてから導入できるでしょう。
設定の多様性と機能内容
設定の多様性にも注目してみましょう。パートやアルバイトなどの雇用条件が異なる従業員の管理もまとめてできると、労務担当者の負担は軽減されます。
フレックスタイム制を導入している企業であれば、何通りかの勤務時間を設定できると、一元管理しやすくなるでしょう。
また、有給休暇や代休などの申請機能はあるか、給料計算までワンストップで行うことが必要かなど、機能の内容についても細部まで確認しておきます。
まとめ
勤怠管理は、従業員の労働時間を正確に把握することから給料計算を正確に行うことまでが含まれます。また、労働時間と給料計算を正確に管理することは、従業員と信頼関係を構築し、働きやすい環境にするためにも不可欠な要素です。
すでに勤怠管理システムを導入している場合もこれから導入する場合も、給与計算アウトソーシングサービスと連携させることで、より正確かつスムーズな労務管理を実現できます。
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