給与計算アウトソーシングとは?
労働人口の減少やテレワークの一般化など様々な社会情勢の変化の中、企業として成長を遂げるために、業務をアウトソーシングする動きは引き続き拡大しています。給与計算のアウトソーシングを検討中の方に向け、検討する際に確認しておきたいメリットや注意点等について解説します。
アウトソーシングとは
給与計算アウトソーシングとは、自社の従業員の給与計算をはじめとする業務を外部に委託することです。給与計算は毎月発生する業務でありながら、専門性が必要で複雑な計算もあるため、担当者の負担が大きいという課題があります。外部委託することによりリソースを確保し、人的問題を解消するための手段として給与計算アウトソーシングは従来より注目されてきていますが、近年では企業の生産性向上や業務品質を向上させ他社との差別化を図ることを目的とするケースも多く見られてきています。
アウトソーシングに委託できる業務
給与計算は大きく以下の6つの工程から成り立っています。これらの工程を委託することができ、加えて賞与計算、年末調整、住民税の更新業務の委託も可能です。
給与計算の工程
(1) 総支給金額を計算
残業や休日出勤などの勤怠管理データを確認し、それぞれの社員ごとの基本給と、住宅手当、家族手当、通勤手当といった各種手当を加えて総支給額(額面金額)を計算します。
(2) 社会保険料や税金を計算
健康保険や厚生年金、雇用保険などの社会保険料、所得税や住民税の税金、財形貯蓄や会社で加入した生命保険・損害保険の保険料など、給与から控除するものの金額を計算します。
(3) 差引支給金額を計算
総支給金額から社会保険料や税金を引いて、差引支給額(手取り)の金額を確定します。
(4) 賃金台帳や給与明細などを作成
労働基準法によって定められたち法定三帳簿の一つである賃金台帳や必要な帳票を作成します。
(5) 従業員への給与振り込み
給料日には、従業員ごとに給与振込指定口座に、手取り金額を振り込み、作成した給与明細を配布します。
(6) 社会保険料や源泉徴収税などの納付
給与から控除した保険料や税金をそれぞれの納付先に支払います。
給与計算の難しさ
給与計算の仕事自体は基本的にルーティンがはっきりしているため、単純作業と見なされがちですが、次の難しさがあります。
・ミスが許されない
給料は従業員の労働の対価であり、ミスは許されません。ミスを起こさないためには労務知識が必要となりますが、自社の就業規則だけではなく、労働基準法や所得税法など、関係する多くの法律について詳しく知っている必要があります。
・専門知識が必要、毎年のように変更がある
所得税として引かれる源泉徴収税や、社会保険料などの金額は頻繁に税制改正などで変更があります。また、労働基準法等の法令も改正が行われることは珍しくありません。その都度新しい知識へアップデートし、かつ確実に理解していかなければなりません。
・コスト面
コスト面でも難しい部分があります。給与計算は基本的にはルーティン業務である一方、社会保険の定時決定や住民税額の年度更新、年末調整などの忙しさの波が多く、また平常月の繁閑差が大きいため人材の管理面、人件費のコスト面の難しさも見過ごせないものとなります。
給与計算アウトソーシングのメリットと注意点
給与計算アウトソーシングには人件費のコスト削減や最新の法令に対応できるなど、さまざまなメリットがあります。一方で、個人情報の漏洩や自社にノウハウが蓄積されないといった点に注意しなければなりません。
給与計算アウトソーシングのメリット
メリット1. 業務の標準化・効率化
業務を外部に委託することにより、非効率になっていた自社業務の標準化も行うことができます。アウトソーシングする際に自社内の業務においてもマニュアル化する必要があるため、必然的に不必要な業務が削ぎ落され自社の生産性を向上することができます。
メリット2. 業務効率化と品質の向上
給与計算アウトソーシングでは専門家が専門ノウハウを活用し対応するため業務が効率化されます。
外部に委託することで自社内での人材育成の負担が減るとともに、高品質のサービスを受けることができます。
メリット3. 法令改正への対応
社会保険や労働保険等の社会保障関係、税制の法令は毎年のように改正が行われるため、担当者は常に法改正の情報をキャッチし、正しく対応する必要があります。しかし、複雑な改正内容を時機を逸することなく掴み、理解して対応することは容易ではありません。一方、給与計算アウトソーシングでは専門家が法改正や税制の最新情報を常にチェックしており、法令に沿った対応をしますので、自社における法令対応への負担を軽減することができると同時に、企業のコンプライアンスを高めることができます。
メリット4. コア業務への集中
給与計算は専門知識が必要で重要な仕事であるものの、ほぼルーティン業務で利益には直接つながらないものであります。給与計算アウトソーシングを活用してノンコア業務の負担を減らし、直接的に企業の利益や売上を生み出すコア業務に人的・金銭的資源を集中させることができます。
メリット5. トータルコストの削減
給与計算には人件費をはじめ、給与計算システム自体にかかる利用費や法令改正に対するためのシステム更新料や保守費がかかってきます。人件費には最新の法令に対応するための教育コストも加わりますが、アウトソーシングすることによって、これらの人材面とシステム面の両方のコストを抑えることができます。
給与計算アウトソーシングの注意点
メリットの多い給与計算アウトソーシングではありますが、一方で次の注意点、デメリットが挙げられるケースがあります。
注意点1. データ漏洩のリスクがある
給与計算アウトソーシングではその性質上、社員の個人情報や給料情報などの機密情報を社外へ提供する必要があり、情報漏洩のリスクは否定できません。強固なセキュリティ体制を敷いているアウトソーシング先の選定が必須となります。
注意点2. ノウハウが社内に蓄積しない
アウトソーシングをすることによって自社社員がその業務を担当する必要がなくなりますので、業務負担が軽くなる一方で自社の経験値を高められないというデメリットも生じます。アウトソーシング企業のノウハウや知見などを吸収できる機会でもあるため、決して丸投げはせず定期的に運用報告を受けるなどの必要があるでしょう。
注意点3. 業務負担がすべて無くなるわけではない
給与計算業務のどの部分をアウトソースするのか、委託範囲により社内に残る負担の割合が変わってきます。また、アウトソースするという事は、今まで社内で完結していた情報のやり取りをアウトソーサーときちんと共有することが必要となります。例えば、社員が引っ越しをした際、タイムリーに共有ができていなければ給与計算上で通勤費にずれが生じてしまうといったケースも考えられます。アウトソーサーとの情報共有には気を使わねばならない部分もあります。
給与計算アウトソーシング先の選び方
給与計算アウトソーシングを導入する際にはメリットだけではなく、注意点を把握し、そのデメリットに対処し、解決を行っているアウトソーシング先を選ぶ必要があります。
MASONでは情報マネジメントシステムに関する代表的な国際規格のひとつであるISO27001の認証を長年に渡り取得しております。ISO27001の情報マネジメントシステムの基、情報セキュリティ手順を定め、セキュリティリスクの低減、社員の情報セキュリティ意識・モラルの向上を徹底しています。
社会保険労務士や豊富な実務経験を持つスタッフを中心に、クライアント様ごとのオーダーメイド形式で業務を受託し、常にオペレーションの見直しや改善をしながら業務効率化を図っています。
給与計算アウトソーシングをご検討中であれば、ぜひお気軽にご相談ください。