コラム

賞与計算の方法を解説!賞与額や税額、シミュレーション例も紹介

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賞与計算の方法について、わかりやすく解説します。ベースとなる賞与額を決定する方法、また算出した賞与から差し引く税金の種類と割合、計算時に注意するポイント点などをまとめました。

賞与額から手取り額をシミュレーションする具体例や、賞与計算をミスなく仕上げる方法も紹介するのでぜひ参考にしてください。

賞与の種類

会社が労働者に支払うお金には、給与や賞与などがあります。給与は、基本的には定期的かつ定額支給されるものです。一方、賞与は会社で賞与規定としてルールが定められているもの、あるいは臨時かつ支給額があらかじめ確定されていないものを指します。

給与は労働の対価として支払われますが、賞与はあくまでも会社内でルールが決まっているときか臨時に支給されるため、すべての職場で支給されているわけではありません。

通常の賞与

賞与は、通常の賞与と決算賞与の2つの種類に分けることができます。通常の賞与とは会社で規定がある賞与、もしくは労働者の働きなどに応じて臨時的に支払われる賞与を指すことが一般的です。

例えば、賞与規定で「年に2回、基本給の1.5カ月分ずつ賞与として支払う」と決めている場合、あるいは欠勤がなく、優れた業績を上げた場合などに支払われます。

通常の賞与は、規定がある場合でも必ずしも支払われるとは限りません。また、労働者の基本給や業績など、労働者によって異なる状況に基づいて支払われることも通常の賞与の特徴です。

決算賞与

決算賞与とは、会社の業績に応じて支払われる賞与です。その年度の業績が良好であったときは、決算賞与を支払い、利益の一部を労働者に還元します。

また、決算賞与は通常の賞与とは異なり、労働者の状況ではなく会社側の状況に基づいて支払われる点が特徴です。ただし、通常の賞与と同じく、必ずしも支払いが約束されているものではないという点に注意しましょう。

賞与計算の方法

賞与を支払うときは、社会保険料と所得税を計算し、天引きしておかなくてはいけません。いずれも給与と同様、会社側が労働者に代わって納税します。

なお、社会保険料には健康保険料と厚生年金保険料、雇用保険料、また、40歳以上の労働者に対しては介護保険料も含まれます。それぞれの計算方法について見ていきましょう。

健康保険料

健康保険料は、以下の計算式から求めます。

標準賞与額×健康保険料率×1/2

標準賞与額は、賞与の1,000円未満を切り捨てて求めます。例えば賞与が515,272円であれば、標準賞与額は515,000円です。ただし、賞与が573万円を超えるときの標準賞与額は573万円として計算します。

健康保険料率は、加入している健康保険組合や健康保険協会によって異なるので注意しましょう。東京都の全国健康保険協会であれば、健康保険料率は9.81%(※)です。

※2022年3月分以降(2022年4月納付以降)の健康保険料率
参考:全国健康保険協会「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」

40歳以上の方は介護保険料も計算

満40歳以上64歳以下の方は「介護保険第2号被保険者」として、健康保険料に加えて介護保険料も計算しなくてはいけません。全国健康保険協会の介護保険料率は1.64%なので、介護保険料を納付する方は健康保険料率を11.45%(※)で計算します。

例えば、標準賞与額が40万円のとき、介護保険第2号被保険者とそれ以外で健康保険料(介護保険料も含む)を計算してみましょう。

  • 介護保険第2号被保険者:40万円×11.45%×1/2=22,900円
  • それ以外:40万円×9.81%×1/2=19,620円

標準賞与額が同額でも、介護保険第2号被保険者かどうかによって賞与の手取りが異なることがわかります。

※2022年3月分以降(2022年4月納付以降)の介護保険料率

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、以下の計算式で求めます。

標準賞与額×厚生年金保険料率×1/2

厚生年金保険料率は全国健康保険協会では18.3%(※)です。また、賞与が150万円を超えるときの標準賞与額は150万円として計算しましょう。例えば、標準賞与額が40万円であれば、以下のように計算ができます。

40万円×18.3%×1/2=36,600円

※2022年3月分以降(2022年4月納付以降)の厚生年金保険料率

雇用保険料

雇用保険料は以下の計算式で求めます。

賞与額×雇用保険料率

雇用保険料率は業種によって異なります。

業種 雇用保険料率 労働者の雇用保険料負担割合
一般の事業 0.9% 0.3%
農林水産業、清酒製造業 1.1% 0.4%
建設の事業 1.2% 0.4%

参考:厚生労働省「令和3年度の雇用保険料率について」

例えば一般の事業において、賞与を40万円支給するときは、天引きする雇用保険料は以下のように計算ができます。

40万円×0.3%=1,200円

所得税

所得税の税率は以下の手順で求めます。

  • 1.前月の給与額から前月の社会保険料を差し引き、所得税率基準額を求める
  • 2.「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から所得税率基準額と扶養人数により所得税率を調べる
  • 3.賞与から社会保険料を差し引き、所得税の課税対象額を求める
  • 4.所得税の課税対象額に所得税率をかける
  • 5.小数点以下は切り捨てる

例えば前月の給与が30万円、賞与が40万円であった場合について考えてみましょう。年齢は30歳、扶養人数は0人、一般の事業に従事しているとします。

給与に対する社会保険料は以下の式から43,065です。そのため、所得税率基準額は256,935円となります。

  • 健康保険料:30万円×9.81%×1/2=14,715円
  • 厚生年金保険料:30万円×18.3%×1/2=27,450円
  • 雇用保険料:30万円×0.3%=900円

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から基準額と扶養人数により所得税率を求めると、6.126%と記載されています。

次に賞与の社会保険料を求めます。以下の式から57,420円なので、賞与の課税対象額は342,580円です。

  • 健康保険料:40万円×9.81%×1/2=19,620円
  • 厚生年金保険料:40万円×18.3%×1/2=36,600円
  • 雇用保険料:40万円×0.3%=1,200円

賞与の課税対象額に所得税率6.126%をかけると20,986.4508円です。小数点以下は切り捨てて、所得税は20,986円となります。

参考:国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和3年度)」

住民税は差し引かれない

住民税は前年の所得から納税額を決め、毎月の給与から天引きされます。そのため、賞与からは差し引かれません。ただし、賞与額が住民税額に影響を及ぼさないのではなく、翌年の住民税額に反映されて翌年の給与から差し引かれる仕組みとなっています。

賞与計算のシミュレーション例

では、具体的に賞与計算をシミュレーションしてみましょう。次の2つのケースで計算します。

  • 【例1】30歳・扶養家族なし
  • 【例2】45歳・扶養家族1人

いずれも一般の事業に従事し、全国健康保険協会に加入していると仮定します。

【例1】30歳・扶養家族なし

前月の給与から社会保険料を差し引いた金額(所得税率基準額)が25万円、賞与が40万円の場合でシミュレーションしてみました。所得税率基準額が25万円で扶養家族がいない場合、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」により賞与の所得税率は4.084%です。

賞与から差し引く保険料・税金の種類 実際に差し引く金額
健康保険料(9.84%) 40万円×9.81%×1/2=19,620円
厚生年金保険料(18.3%) 40万円×18.3%×1/2=36,600円
雇用保険料(0.3%) 40万円×0.3%=1,200円
所得税(4.084%) {40万円-(19,620円+36,600円+1,200円)}×4.084%=13,990円

すべての社会保険料と所得税額を合算すると71,410円となります。そのため、実際に支払われる賞与は328,590円です。

【例2】45歳・扶養家族1人

前月の給与から社会保険料を差し引いた金額(所得税率基準額)が40万円、賞与が60万円の場合でシミュレーションしてみました。所得税率基準額が40万円で扶養家族が1人の場合、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」により賞与の所得税率は12.252%です。

賞与から差し引く保険料・税金の種類 実際に差し引く金額
健康保険料+介護保険料(11.64%) 60万円×11.45%×1/2=34,350円
厚生年金保険料(18.3%) 60万円×18.3%×1/2=54,900円
雇用保険料(0.3%) 60万円×0.3%=1,800円
所得税(12.252%) {60万円-(34,350円+54,900円+1,800円)}×12.252%=62,356円

すべての社会保険料と所得税額を合算すると153,406円となります。そのため、実際に支払われる賞与は446,594円です。

賞与額の計算方法

賞与額から天引きする保険料や所得税額の計算方法はルールが決まっていますが、賞与額そのものを決定する方法は、企業によってルールが異なります。主なルールについて見ていきましょう。

通常の賞与は基本給ベースで計算する

通常の給与は、基本給の何倍という風に計算することが一般的です。例えば、「年間賞与額は基本給の2.5倍」や「夏の賞与は基本給の2カ月分、冬の賞与は基本給の2.5カ月分」のように、賞与規定で定めていることがあります。

企業規模によって倍率に差がある

基本給の何倍の金額が賞与として支給されるかは、企業規模によって一定の傾向があります。全体的に見れば、企業規模が大きいと倍率が高く、企業規模が小さいと低くなることが一般的です。

民間企業は業績によっても異なる

公務員は通常の賞与のみというケースが一般的ですが、民間企業では業績によって臨時のボーナスが支給されることも少なくありません。そのため、基本給があまり変わっていないのにボーナスが毎年大きく変わるということもあります。

まとめ

まとめ

賞与計算は、社会保険料や所得税額を差し引いて求めます。計算方法はルールが決まっているので特に難しくはありませんが、介護保険第2号被保険者かどうか、扶養家族が何人いるかなどによって計算が異なるため、手間がかかり、ミスにつながることもあるでしょう。

正しく計算し、正しく納税するためにも、賞与計算のアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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